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中部いびき睡眠障害研究所
代表・日本睡眠学会認定医
岩永耕一
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現代の日本人の睡眠時間は、この半世紀に約1時間減少したと言われています。
また、社会や産業構造の著しい変化により、ヒトの睡眠パターンにも様々な問題が生じ、睡眠の質が大きく障害されている方が多数認められます。そのことで、日常生活に問題が生じたり、仕事や学業に影響をおよぼしています。
中部いびき睡眠障害研究所では、睡眠時無呼吸症候群はもとより、下肢が就寝中にビクつく(周期性四肢運動障害)、下肢がほてり、違和感のために就寝ができない(むずむず足症候群)、ナルコレプシー、不眠症、交代勤務症候群、概日リズム障害など様々な睡眠障害の検査から診断治療に至るまでおこなっております。
この度、日本睡眠学会認定医療機関A型を岐阜県下で初めて取得することができ、今後更なる研究と睡眠障害でお困りの方へのきめ細かい対応を心がけていきたいと思っております。
睡眠に関することでお悩みの方はぜひご相談ください。 |
子供の閉塞型睡眠時無呼吸症候群の頻度は1~3%と言われていますが、大人の場合と違い、昼間の眠気が少なく、わかりにくいことが多いのです。それは、無呼吸とは息が止まる状態ですが、子供の場合、低呼吸といわれる、いびきを伴った不十分な呼吸が主体になることが多いためだと思われます。子供は、乳児期から小児期までどの時期にも認められます。決して、無呼吸症候群は大人のものだけではないのです。
小児の場合、無呼吸により、睡眠の確保ができず、それにより昼間のいらつきや無気力感、集中力の低下により落ち着きなく多動になったりします。また、深い睡眠の時期に、成長ホルモンが分泌されるので、成長ホルモンの分泌低下により成長が遅れたりすることがあります。
7歳以下の子供は、夜間は鼻呼吸が優位のため、口呼吸はあまり上手にできません。鼻水が多かったり、鼻詰まりがあると極端に呼吸が障害され、咳反射が起こり、覚醒し、体動が多くなります。よく、風邪で夜間咳が多いと心配し親御さんが病院を受診されますが、その時は、子供は、間違いなく呼吸障害を起こしています。子供と大人は診断基準も症状も大きく違います。自分で訴えることが少ない子供の場合、親が注意深く観察することが大事です。原因として最も多いのは扁桃腺肥大・アデノイド増殖症であり、手術による治療がベストです。
米国の論文で、子供の無呼吸を放置すると、脳の発育に問題が生じたと言うものや、知能指数の低下が認められたと言うものがあります。英国の論文では、子供の無呼吸を放置するとメタボリック症候群になるというものもあります。子供の無呼吸は、放置すると、必ず、将来に影響するので、早期発見、早期治療に心がけるべきです。
下記の項目は要注意です。
・よく気管支炎・中耳炎を起こす
・口を開けている
・異常ないびき・異常な体動
・発育・学力の遅れ
・落ち着かない
・おねしょ
・イライラ・不機嫌
・寝起きの悪さ・過度の昼寝
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むずむず脚症候群(RLS: restless legs syndrome)
むずむず脚症候群(RLS:restless legs syndrome)は、下肢の不快感、特にほてり感や虫がはうような感覚が夕方から夜間に多く認められます。不快な感覚を解消しようと脚を動かさざるを得ない状況が続き、そのため、不眠の原因となります。
むずむず脚症候群の原因としては未だ確定的なものはありませんが、貧血や甲状腺機能障害、透析患者によく認められます。
まだまだこの疾患の知名度は低く、放置されていることが多いのが現状です。
治療は、原疾患の治療とドーパミン製剤を使用します。英国の大規模な調査により、治療薬剤の有効性や安全性が確率されつつあります。 |
高血圧の原因は本態性と二次性に分けられ、睡眠時無呼吸症候群は二次性高血圧の最多原因と考えられています。高血圧の発症率は、軽症の睡眠時無呼吸症候群で約2倍、中等症で約3倍になります。さらに、多剤使用が必要な高血圧症の80%以上に睡眠時無呼吸症候群が合併していたとの報告もあります。睡眠時無呼吸症候群をきちんと治療すると血圧の調節が良好になることが多々あります。
睡眠時無呼吸症候群の診断・治療は高血圧の予防および良好な血圧調節をもたらすことになります。 |
睡眠時無呼吸症候群があると、将来的な脳血管疾患の合併率を高くします。また、睡眠時無呼吸症候群は脳卒中の再発率を増加させます。
若年性で原因不明の脳卒中の場合には、睡眠時無呼吸症候群を基礎疾患として持っていることが多いので、SASを積極的に疑わなければなりません。
無呼吸による低酸素状態や睡眠時無呼吸症候群に合併した不整脈によって脳血栓症がおこることも多々あります。 |
睡眠時無呼吸症候群にメタボリックシンドロームを高率に合併します。内臓脂肪からは脂質代謝に関係する様々なホルモンが分泌することが明らかになっており、睡眠時無呼吸症候群を治療することにより、メタボリックシンドロームの状態が改善することもしばしばあります。 コレステロール値の上昇と睡眠時無呼吸症候群の重症度が相関し、睡眠時無呼吸症候群を治療することにより、コレステロール値の低下が認められたという、データも報告されています。 |
睡眠時無呼吸症候群を含めた睡眠障害は、血糖を下げるために膵臓から分泌されるインスリンの効果を減弱(インスリン抵抗性)させます。それが過剰なインスリンの分泌につながり、糖代謝異常や糖尿病の発症につながります。 睡眠時無呼吸症候群の約50%に糖尿病、あるいは糖代謝異常が合併しており、睡眠時無呼吸症候群合併の糖尿病に対し、睡眠時無呼吸症候群の適切な治療をすることにより、糖尿病のコントロールが改善するという多くの報告があります。 睡眠時無呼吸症候群は糖尿病の原因となり、増悪因子となります。 |